【EC物流委員会】成果発表会に行ってきました
はじめに
皆さんこんにちは。
先日、日本3PL協会主催の「EC物流委員会 成果発表会」に参加してきました。
EC物流委員会は、日本3PL協会で行っている研究会で、年間の活動を通して
ECにおけるテーマの研究を行う活動です。
2023年度は3つのワークグループに分かれて活動をされており、
それぞれのグループからの発表がありました。
委員長登壇「食品ECの未来を支えるEC物流の未来」
EC物流委員会の委員長であるアスクル株式会社取締役COOの川村氏が登壇をされ、
アスクル社で取り組まれている様々な施策のご説明を中心に、
将来のEC物流に欠かせない対策等の説明がございました。
また、来期のEC物流委員会のテーマである「多様化するEC物流におけるDXの推進」にも触れられており、
将来的にデータやAIを活用し、全体をDX化していくことが重要であり、
徹底的な高度自動化(ロボット化)が人手不足に対して必須であると説明をされました。
ワークグループ1「食品ECの未来を未来を支えるEC物流の役割」
ワークグループ1は参加が初めての企業などの、
初心者コースとして実施されました。
ECの定義付けから現状の課題などをまとめており、
非常にわかりやすい内容になっていました。
発表内容
サブテーマ:食品のEC化率を上げるためには何が必要か
【ECとEC物流】
ECの定義:インターネットを利用して、受発注がコンピューターネットワークシステム上で行われること
【市場調査】
・物販系分野、サービス分野、デジタル分野それぞれが増加傾向にある。
・EC化率は増加しているけど鈍化している
・物販系分野の中でも、食品ECについては一番市場規模が大きい
【食品ECのメリット・デメリット】
メリット
・普段買えないものが気軽に買える
・店舗より安い
・重いものを運んでくれて便利
・家にいながらじっくり商品を調べて購入できる
デメリット
・商品によっては置き配ができない
・送料が高い
・実物が確認できないので不安
【食品ECにかかわる企業の現状】
①物流センター業務:食品特有の管理項目が必要
・温度管理→適切な場所の管理と維持費が必要
・日時管理→期限を超えた商品は廃棄の対象になる→フードロスにつながる
・衛生管理→食の安全を守るため、厳格な管理が必要
②配送業務
:ドライバーの人員不足(労働人口減少による人員不足)
→運送会社に起きている変化 サービス優先で届けていた運送会社も持続可能な事業形態に変化
:食品の特性上は業者都合だけで変えるのが難しい
→車両と配送中継地点ともに管理が必要
③食品ならではの配送時配慮
・集荷から配送間の形状破損→重大なクレームに発展
・温度差結露、品質劣化、防虫等→置き配NGのため、再配達が起きやすい
・時間経過品質劣化→リードタイムの延長対応ができない
【ディベロッパー視点の施策】
・デベロッパーによる冷凍・冷蔵対応のマルチ倉庫が増えてきている
→2017年以降増え続けている、今後さらに加速する
→建て替え・設備更新が迫るが進まない(築40年以上が1/3、フロン規制)=マルチ倉庫への変更
→冷凍食品の重要増により冷凍冷蔵倉庫の需要増
【企業・行政の取り組み】
企業:事業を継続するために投資を実施(ソフトへの投資、ハードへの投資 少人化、無人化)
→共同配送の実施
行政:補助金実施(システムの構築・連携:自動化機械化機器の導入)
→モノ・データ・業務プロセス等の標準化の推進
【まとめ】
食品EC物流は市場規模、金額が増加しており、
今後も増加し、それに合わせて商流、物流も変化していく
ワークグループ2「食品ECにおける市場分析と今後の拡大予測」
ワークグループ2では、より具体的な数値による市場分析をもとに、
今後の食品EC市場がどのように拡大していくのかを発表されていました。
発表の内容が、エビデンスをもとにまとめられていたのが印象的でした。
また、LINEギフトなどの身近な商材も発表内容に取り入れられていたことにより、
かなり理解のしやすい発表内容でした。
発表内容
【市場規模】
・市場規模の中でも食品関係が圧倒的にシェアが多い(2兆7505億円)
・EC化率はほかの市場と比べるとそこまで高くない(4.16%)
→今後さらなる成長が見込める分野であると推察できる
【国内ECモールの食品における売り上げ分析】
・独自調査→冷蔵・冷凍の割合が高い
・冷蔵・冷凍を取り扱う自動販売機を目にする機会が増えている
・家庭用の冷食が10年で42.4%増加(4000億)
【3PL事業者の課題】
賃貸契約関係
・希望する面積で借りれる冷蔵冷凍倉庫がない
・波動があるため賃貸する期間の交渉が困難
資金関係
・新規で冷蔵冷凍倉庫を開発建て替える等の資金調達が難しい
・資材費建築費高騰により自社設備投資のハードルが高い
建物関係
・地区円数が古くバース数や荷捌き場が少ない
・電気代が高い
→続々と3温度帯対応の物流施設が増えてきている
付加価値
・足回りの充実、ビジネスアライアンスの期待
・温度帯専用施設のメリット(有効天井高5.5m)
・常温と比べると賃料→2倍、電気代→4倍になる+社会的要因による原価増に合わせ荷主様にもコスト増を認識いただく環境整備が重要
【食品EC市場の伸長可能性】
・Eギフト、ソーシャルギフトの拡大
→LINEギフト(遅れるギフトが増えている1300店舗 20万点 食品飲料多数
:市場規模×利便性がEC化率を牽引
・買い物弱者対策実地見学「ソラカラ便」「とくし丸」
→約1000万人の買い物弱者がいる
*食料品等を購入できる店舗まで500m以上
*自動車利用が困難
*65歳以上の高齢者
・受け取り方の多様性
→スマートロッカー等BtoCをBtoB仕様にする
→宅配BOX、玄関前置き配の増加
※置き配は満足度が高く、特に気にならないという意見が多い
【まとめ】
①食品EC化率は今後も上昇を続ける
②「買い物弱者」社会問題を解決する必要がある
③受け取り方の多様化を図り、インフラ維持に努める必要がある
ワークグループ3「食品ECを成功させるためのコスト分析及び生協の事例研究」
ワークグループ3は、主に生協の仕組みを軸に現状の食品ECの分析を行った発表でした。
通常の食品ECとは異なった形の配送システムを取っており、
コスト分析の面や仕組みの面でとても興味深い発表内容でした。
発表内容
【食品ECと3PL(分析)】
「食品・飲料・種類」の消費額は外食に対しても5倍以上、しかしEC化率はまだまだ低い
【通常ECと食品ECの違い】
→通常ECとの比較:温度帯管理が壁
→食品スーパーとの比較:宅配の壁
【食品ECカテゴリの特徴】
・大型ネットスーパー
・店舗ネットスーパー
・宅配生協
・健康食品
・独自商品
:店舗型とセンター型の比較
→センター型は店舗型に比べてコストがかかるため、強みを生かせないと固定費を回収できなくなる
:健康食品の強み
→店舗型とセンター型の良いところどりをして成功しているのが定期配送型の健康食品。住宅街などの賃料の低い場所に立地している
【時間帯指定の効率性検証】
・ルーティングシステムを用いて、時間帯指定の有無によって配送虚位や配送に要する時間がどの程度変わるか、検証を実施
→1時間単位の時間指定 15枠
→5枠指定
→時間指定なし
・配達範囲が広いほど、時間帯指定による非効率は大きくなっていく、時間帯指定がある場合、指定の時間になるまで待機をするケースが発生する
【生協の研究分析】
①宅配生協から得られるヒント
・PB商品
・定期配送
・時間帯指定なし
②日生協と会員生協に分かれる
→製品開発は日生協が行う(70%がPBのうち共同開発、のこりが卸商品)
一般的なネットスーパーは翌日配送 翌日受注分を予測して 在庫、倉庫作業者、車を手配 小規模エリアで個別最適化
→宅配生協は1週間ごとの定期配送 = 在庫センターを全国規模で集約、1週間前の受注情報をもとに計画 → 全体最適化(作業・在庫ロスの最小化)
・配達順・組合員オーダー順に商品を周品
・システム内で荷合わせ
・荷合わせの完了したオーダーを配送ルート番号ごとにまとめて積み込み
宅配デポ
①商品ごとの適切な温度帯の倉庫に配送ルートごとにまとめられた状態で一時保管
②配送ルート番号ごとに集品
③商品の温度帯ごとに荷台の中で分けて積み付け
置き配前提、配送時間指定なし
→一筆書きで配送ルートを設定、車両手配が安定する
・オリコン、発泡スチロール、段ボールを配送順に並べて積み込み
・複数納品分を集約して、配送効率向上
・商品温度帯別に分けて集品
※積載効率を上げるために、トラック内でのピッキングを行っている
【食品ECの今後】
宅配を効率化する新技術開発が求められる
・リードタイムの短縮
・温度帯管理の効率化
・配送網のシェアリング
まとめ
いかがでしたでしょうか。
当社は、人材派遣・紹介を行う会社として、
物流業界の労働者不足について日頃サポートを行っております。
業界の中では、DX化などの自動化を進めておりますが、
まだまだ課題がたくさんあるのが現状です。
これからも時代のニーズに合わせて適切なサポートを行えるように
様々な施策を行っていきたいと考えております。
EC物流委員会に興味がある方は、日本3PL協会より申し込みが可能ですので、
是非チェックしてみてください。
リンク:一般社団法人日本3PL協会
執筆担当:河田